左に不安の稀勢の里 “下半身頼み”で残り12日乗り切れるか
稀勢の里は先場所から9キロ増量。現在は184キロと過去最重量だ。角界内では、「もともと素早い力士に弱いのに、これ以上重くなったらスピードについていけなくなる」と懸念されていた。それでもこの日の相撲を見る限り、スピード力士が相手でも下半身で粘り、増量した分のパワーで圧倒すれば、そこそこいい勝負になりそうだ。ならば、今場所残り12日間、下半身の粘りだけで持ちこたえられるのか。
■取れない右上手で苦戦は必至
冒頭の中澤氏は「とても安心できない。不安だらけです」と、こう続ける。
「左に不安を抱えているからか、2日目の隠岐の海戦を除けば右上手が取れない相撲が目立つ。こうなると、稀勢の里は攻め手に欠ける。もちろん、下半身を鍛えるのは間違いではない。しかし、下半身頼みでは、受けの相撲になる。私は昔、春日野親方時代の栃錦(元横綱)に『横綱相撲とは何ですか?』と聞いたことがある。栃錦はしばらく考えて『相手に相撲を取らせないこと』と言った。たとえ受けて立ったとしても、相手が技を出す前に封じ、自分の思い通りの相撲を取るのが横綱というわけです。そこまでの相撲はまだ稀勢の里には求めていませんが、右上手が取れない以上は苦戦を免れません」
今後は大関、横綱といった実力者との対戦も控えている。左を使えずに勝てるほど、甘い相手ではない。残り12日間を務めるだけなら可能でも、そこは負け越しが許されない横綱だ。千秋楽まで休場がチラつくことになりそうだ。