大山4番、植田抜擢 終盤V争いも見据えた金本監督の育成術
「育成を重視するというだけのことはあるな」
ある阪神OBがこう語るのは金本監督の選手起用についてだ。
2位阪神は5日から6.5ゲーム差で首位に立つ広島との首位攻防戦に臨む。この3連戦はひとつの「ヤマ場」ではあるが、阪神の残り試合は22(広島18)もある。本当にシビれる試合はまだ先だ。
しかし、阪神は優勝から10年以上も遠ざかっている。若手はガチガチに緊張する試合経験がない。
「その点が懸念されているから、手を打っているのだろう」と、冒頭のOBがこう続ける。
「金本監督が視野に入れているのはペナント争いだけではない。阪神はCS(クライマックスシリーズ)にめっぽう弱い。若手が終盤の優勝争いやCSで実力を発揮するには、事前に緊張感をもたせて慣れさせておくしかない。阪神はファンが多く、マスコミもうるさい。重圧のかかる役割を与え、そこで結果を出すのは容易ではないが、期待に応えれば若手は急激に伸びる。多くの監督はそれが分かっていても、優勝を争っている時にはなかなか実行できない。金本監督は、8月後半から2年目捕手の坂本にスタメンマスクをかぶらせ、9月に入ると1年目の大山を4番に抜擢。機動力のある高卒3年目の植田を遊撃のスタメンで使い出したのはそのような意図からだと思う」
8月26日から坂本がスタメンマスクをかぶるとチームは6勝2敗。大山は4番に起用され、いきなりホームランを放ち、植田も30日のヤクルト戦で好走塁。「育てながら勝つ」といった金本監督の信念に若手は正念場で応えることができるか。