仮に清宮を預かるなら コーチには「指導禁止」と指示する
清宮くんに関しても、だから大学に進むのもひとつの手だよ、と思っていた。大学の4年間で実績を残し、22歳でプロに入ればどこの球団も即戦力とみなしてくれる。新人といっても、いきなりコーチからイジくられることはそうない。
これが、高卒ルーキーだと様相がだいぶ違ってくる。当然のことながらまだ未完成。プロの目には、ここが欠点、あそこも問題、とマイナス面が多く見えてくる。しかも相手は18歳。コーチからすれば言いやすく、ハイハイと素直に聞いてくれるものだから、余計にしなくてもいいアドバイスまでしてしまう。
投手コーチとしての私は、「投球フォームは選手の主張」が持論。どんな投げ方であれ、それでプロに認められて入ってきたのだから、それがあなたの個性だと尊重してきた。コツは教えても、フォームそのものに手を入れたことはなかった。 唯一、中日で二軍投手コーチを務めていた40年前、ドラフト1位で入ってきた高卒左腕の都裕次郎だけは別で、左肩が大きく下がって天井を向いて投げるようなフォームを徐々に修正したことがある。それでも、入団2年間はジーッと見守った末のことだ。都は3年目に一軍昇格し、6年目には16勝を挙げた。
そういう成功体験があっても、私は選手のフォームはイジらない。50年近い指導者経験の中で、「教え過ぎは悪」と身をもって知っているからだ。