卓球のプロとアマをめぐるシビアな人的交流の中で生きる
相撲にモンゴル閥があり、駅伝にケニア閥がある。しかし、卓球の中国閥はもっと根が深い。
卓球はもともとヨーロッパで生まれた競技だが、1990年代に入って中国が世界を制するようになった。95年から10年間の世界選手権では、全種目の91%のタイトルを中国勢が取っている。
卓球の日本リーグに初めて中国人助っ人が登場したのは87年。その後も多くの選手が来日したが、今世紀に入ってから徐々にこの数が減り、それには理由があった。
中国卓球協会は95年に誕生していた卓球リーグを、00年に超級リーグへ発展させてプロ化を打ち出した。
一方の日本実業団リーグは不況から企業がチーム保持の目的を失って撤退が続き、中国選手の流入は減って、むしろ福原愛のように、日本選手が中国へと逆流を始めたのだ。さらに09年、中国卓球協会は自らの1強時代に見切りをつけ、世界競争による卓球の発展を促すべく大胆な“養狼計画”を打ち出した。“狼”すなわちライバルをつくろうと、自国のコーチの海外派遣を奨励し始めたのだ――宇さん夫婦の人生もこの流れをなぞっている。