伊調パワハラ問題で浮き彫り 代表監督“所属先兼務”の弊害
テレビのワイドショーで連日取り上げられている女子レスリングのパワハラ問題。五輪4連覇の伊調馨(33)が、日本レスリング協会の栄和人強化本部長(57)から嫌がらせを受けたという一件は、伊調がアテネ、北京と五輪を連覇し、さらなるレベルアップを求め、恩師である栄氏の元を離れたことが引き金になったようである。
栄強化本部長は至学館大の監督を兼務しているため、同大学や付属高には全国から有望選手が集まる。リオ五輪金の登坂絵莉、川井梨沙子、土性沙羅も同大を卒業。伊調も吉田沙保里も大学名が変わる前の中京女子大学出身。昨年12月の全日本選手権の女子は10階級中、8階級が至学館大の選手かOG。まさに女子レスリング界は「栄王国」といえる。
女子レスリングは極端な例だが、アマチュアスポーツ界には以前から「企業や学校の監督が日本代表のトップを兼務するのはおかしい」との声がある。
■ライバルを丸裸に
「代表候補の強化段階から、自分の教え子をえこひいきするような露骨な監督やコーチは、今はいないでしょう。でも、ある実業団の監督は代表のトップも兼務していたことで、代表候補の血液データから各選手の疲労度や筋肉損傷の数値などを把握できた。実際にやっていたかどうかはともかく、教え子のライバルとなる選手たちの体調変化や特徴がわかれば、適切な助言ができる。五輪の代表選考会などでは有利になる。教え子が五輪代表になれば自分の実績にもつながる。そんな状況が野放しにされているのは公平とはいえない」(実業団OB)