全仏で完全復帰も若手台頭 錦織圭を待ち受ける厳しい前途
ただ、錦織が元に戻っても、その間に世界は前進していたことを思い知らされた。
「ティエムはサーブが速くなり、粘りが出てきたと感じた。訳の分からない試合だった」
第1セット、時速220キロに及ぶファーストサーブをぶちかまし、ラリー戦に入ってもベースラインへ、ダウンザラインへ、ラインを叩くウイナーを何本も決められた。第1、第2セットのファーストサーブからのポイント獲得率は100%。ライン際に時速200キロ超のボールを思いきり打つだけの自信を、錦織の留守中に蓄えていたのだ。第2セットの0―6のスコアは、その現実に気付かされたショックを物語っていただろう。
多くの故障者が出た昨シーズンは、ティエムを筆頭に多くの若手が台頭した。アレキサンダー・ズベレフ(21歳)、カレン・ハチャノフ(22歳)、デニス・シャポバロフ(19歳)……これら“留守中”の訪問者がツアーの中核を占めていることを実証した大会であり、錦織には完全復帰だけで喜んでいられない厳しい前途が待っている。
手首の痛みも残る。テーピングをしていれば問題ないというが、ミスヒットでは影響があることは、この試合でもうかがわれた。これからはイレギュラーの多い芝シーズンだけに、そこへの不安も大きくなる。長い目で見る強い気持ちが必要だ。