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権藤博野球評論家

1938年12月2日、佐賀県鳥栖市生まれ。鳥栖高からブリヂストンタイヤを経て61年に中日入り。1年目に35勝19敗、防御率1.70という驚異的な成績を挙げ、最多勝や沢村賞などタイトルを総ナメに。連投に連投を重ねる姿に「権藤、権藤、雨、権藤」の流行語が生まれた。68年に現役引退後は各球団の投手コーチを歴任。横浜で初の監督に就任した98年にはいきなりペナントを制し、38年ぶりの日本一に導いた。

故障が癒えても続く…大谷の“フォーク”という劇薬との闘い

公開日: 更新日:

 イヤな予感が当たってしまった。

 エンゼルスの大谷翔平(23)が、右肘靱帯の損傷で故障者リスト入り。とりあえず、血小板注射による保存療法で様子を見ることになったが、靱帯移植手術の可能性も否定できない。

 メジャーのマウンドは日本に比べて硬い。下半身が使いづらい上、ボールが滑りやすいから、上半身、特に肩や肘への負担が増す。そこへ持ってきて、大谷はフォークボール、つまりスプリットを多投した。

 4月の登板4試合の変化球の比率でいくとスライダーの22.2%、カーブの2.9%に対し、スプリットは30.3%。メジャーの強打者を相手に快投を演じる姿を頼もしく感じる半面、これはちょっと危険だぞ、と思っていたのだ。

 日本での大谷の変化球はスライダーが中心で、十分にウイニングショットの役割を果たした。だが、スライダーはコースが甘くなれば、最も長打になる可能性が高い球種でもある。打者が少し泳いで球をとらえる分、体重が前に乗って打球が飛ぶのだ。パワー自慢のメジャーの打者なら余計に本塁打の危険が増す。しかも彼らは、手足が長くて、思い切り踏み込んでくるから、横の変化にはバットが届いてしまうリスクもある。

 そこで日本人投手は、打者が最もバットに当てにくい球、フォークに頼る。ダルビッシュも田中将大もそうだった。

 いずれも、決め球たり得るスライダーを持ちながら、メジャーに行ってフォークの比率が増えた。そして、肘を痛めた。

 フォークは劇薬だ。フォークの投げ手が少ない米国では特によく効く。打者のバットがクルクルと面白いように回る。よく効くだけに副作用もある。肩や肘への負担が大きいのだ。

 今の血小板注射による保存療法で患部の状態が改善したとしても、あるいは、手術に踏み切って1年半後にマウンドに戻ってきたとしても、復帰後の大谷は同じ問題に直面する。日本時代のように、フォークをなるべく温存し、直球とスライダーを中心とした組み立てで戦うのがベターだと思うが、果たしてすんなりモデルチェンジができるだろうか。フォークという劇薬の大きな効果を知っているだけに、簡単にそれを捨てることができるだろうか。

 大谷の劇薬との闘いはこの先も続いていく。

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