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武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

大坂に体作りとコートへの集中力を促したコーチの手練手管

公開日: 更新日:

 昨年からの最大の変化は約7キロの減量だった。開幕戦では誰もがナオチのシェイプアップされた体に驚いた。サーシャが徹底した基礎トレーニングを積ませた効果だが、練習嫌いのわがまま娘が夢中になるほど、このコーチの練習は面白い。さまざまなアイデアを提案し自分も選手と一緒にやるのが特徴で、練習コートには笑いが絶えない。それがセリーナに8年も可愛がられた理由だろうし、そこで学んだことも練習に取り入れている。

 テニスコーチというのは選手のキャリア戦略を設定し、各シーズン、各大会、各試合で戦術を授けていく。時間がかかるものだが、サーシャとナオチの場合、出会って3カ月もしないうちに大きな結果が出ている。

 最初のツアータイトル、3月のインディアンウェルズはグランドスラムに次ぐプレミアマンダトリー4大会のひとつで、このレベルの優勝も男女を通じて日本人初の快挙だった。

 ナオチはパワーだけでなく、錦織圭に通じるショットコントロールの持ち主だ。錦織ほど技術はなくともパワーがあり、一発で決めるサーブもある。たった3カ月で戦略と戦術を授け、結果を出すということは普通はあり得ない。サーシャの手柄は、才能豊かなウブな選手に、体づくりの大事さとコートへの集中力を促した指導力に尽きるだろう。

 優勝が決まるとスタジアムは興奮のるつぼと化した。サーシャはファミリーボックスで立ち上がって拍手をしながら、呆然とした青い目から大粒の涙を流していた。彼自身も、今さらのように驚いたのだ。ウブな選手とウブなコーチのケミストリーが奇跡を起こした瞬間だった。

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