広島は黄金時代へ 前編成グループ長が明かすドラフト秘話
ただ、どの練習試合で計っても一塁到達のスピードが4秒を切っていました。4秒切りは当時のカープの右打者では赤松だけ。鉄砲肩と足は突出していました。バネのある走り方がいいなと。当時はショートを探していて、最後は北條との一騎打ちになったが、担当の尾形スカウトが熱心で、「足なら誠也です」と。オーナーと当時の野村監督からの「ピッチャーだけど肩と足があるならショートは守れるのか?」「鍛えれば何とかなるのか?」という質問にも「大丈夫です」と即答。映像を何度も見せ、誠也獲得にGOサインを出してもらいました。オーナーが担当スカウトの話を重視してくれるのも他球団にはないところでしょう。
12年のドラフト1位は投手の森(東福岡高=楽天)、増田(NTT西日本=西武)と抽選を2度外し、高橋大(龍谷大平安高)を外れ外れ1位で指名。これが逆に幸いしたかもしれません。誠也を4位から繰り上げやすい状況が生まれました。
編成とスカウトが情報を密にしているのもカープならではです。苑田さん(73=スカウト統括部長)とはよく酒を飲みながら未来のカープについて語り合いました。とにかく意見を聞いてくれて、ドラフト直前の9月になって「このポジションが足りない」と言っても徹底的に探してくれる。編成は二軍も見ます。捕手を頼んだのに、「二軍であの選手が育ってきている」と感じたら、「やっぱり捕手はやめましょう」と言うこともあります。普通は怒るでしょう。それでも苑田さんは文句ひとつ言いません。