六川亨氏特別寄稿<上>サッカー界の衰退を止めた炎の守護神
MF前園真聖の2ゴールでリードした日本だったが、マレーシアの酷暑に後半途中からは防戦一方。そこで獅子奮迅の活躍を見せたのが川口だった。2―1で逃げ切って28年ぶりの五輪切符を獲得。本大会では、初戦のブラジル戦で28本ものシュートを浴びながら、神掛かり的なセーブで無失点に抑えて「マイアミの奇跡」を演出した。
鹿児島戦前に川口に当時のサッカー界の状況を伝えると「そうだったんですか。サッカー界に貢献できて良かったと思います。あのとき(サウジ戦)は必死でしたから」と笑顔で振り返った。
鹿児島戦の川口は、3度の大ピンチを果敢な飛び出し、俊敏な反応で防ぐと鹿児島の選手は決定機でシュートをゴール枠内に飛ばせなくなった。鬼気迫る川口の迫力に威圧されたのかもしれない。「いつもの能活が戻ってきた」と感じながら、日韓W杯前の「2002年2月」を思い出した。
川口は01年10月、英フットボールリーグの1部
(2部に相当)所属のポーツマスに移籍した。守備的な選手はもちろんのこと、GKとして初めて海外移籍を果たしたパイオニアとなった。
「誰も欧州に行ったことがないので手探りのチャレンジでした」と鹿児島戦前に振り返った川口と02年2月に現地で出会った――。