イチローが来年から年平均4.4億円を手にする“カラクリ”は
ディファード・ペイメントによるメリットが一番大きいのは、設定された金利が高く、かつ、支払いまでの据え置き期間が長い選手だ。その代表格がイチローである。
イチローはマリナーズと08~12年の5年間の年俸8500万ドル(94億円)のうち2500万ドル(28億円)を引退の翌年から15回払い(推定)で受け取る契約を交わしている。2500万ドルを15分割すると年額は167万ドル(1・8億円)だが、イチローはこれに5・5%の複利が付いた形で20年から受け取ることになるので、受給額は年平均で400万ドル(4・4億円)に膨らむ。イチローは引退しても60歳前後まで毎年、メジャーリーグの平均年俸に相当する額を受け取ることになるのだ。
選手が球団と交わしたディファード・ペイメント契約は、球団に対する債権証書と同じ意味を持つので、税の滞納、養育費の未払い、借金の未返済などがあった場合は、差し押さえの対象にもなる。元メッツの主砲ストロベリーは、90年の年俸の一部である180万ドルを5・1%の利息付きで04年から30年間の分割払いで受け取ることになっていたが、国税を滞納。15年にはメッツと交わしたディファード・ペイメントの契約を、内国歳入庁(日本の国税庁に相当)に差し押さえられ、競売に掛けられる屈辱を味わった。