投手「球数制限」に反対 07年夏制覇の佐賀北元監督に聞く
大船渡・佐々木朗希が岩手大会決勝で登板回避したことで、百家争鳴の議論が巻き起こった。それは、高校野球界で大きなテーマとなっている球数制限の問題にも直結する。4月にスタートした日本高野連による「投手の障害予防に関する有識者会議」は、2度の会合を経て、一定期間に限定して球数総数に制限をかける方向になった。会議メンバーとして球数制限に反対の意思を表明し、2007年夏に佐賀北を率いて全国制覇を果たした百崎敏克氏(63=佐賀北野球部副部長)に話を聞いた。
■何年後かに当たり前になる
――大船渡・佐々木の登板回避について、議論が巻き起こっています。
「07年夏、甲子園で計73イニングを2人の投手で戦いました。でなければ勝てなかったからです。その一方で、地区大会を投手1人に投げさせて甲子園へ行ったこともある。故障が心配なので本人やトレーナーに直接的、間接的に話を聞くなど気を使いました」
――大船渡の監督だったらどうしていましたか。
「佐々木君が痛いといったら止める。肩肘に異常が認められず、周囲に止める人がいなければ投げさせるでしょう。負けたら終わりの大会ですからね。選手の立場として、甲子園に行くために痛みを隠してでも投げたいという気持ちもわかるし、故障に配慮をする気持ちもわかる。今回の起用が間違っているとは言えない。国保監督は佐々木君の将来に悪影響を及ぼすと判断したのだと思う。今回のケースは、何年後かに当たり前になってくるかもしれません」
――モデルケースですね。
「選手を守る、連投や酷使による故障を避けるという方向で一致していくでしょう。そうなれば、1人の選手が毎日のように連投して周囲の感動を呼ぶこともなくなる」
――昨夏の吉田輝星(金足農)は二度と出てこない。
「一つ負ければ終わりというトーナメント制と球数制限は、本来は相いれないものだと思います。トーナメントを戦いながら、球数を多く投げることによる故障をケアするのであれば、環境を整備しなければならない。球数だけを制限すればいいという単純な問題ではないと考えています」
――4月の有識者会議で球数制限に反対の意思を表明した。「佐賀北では昨年の高校3年生の19人中、大学でも野球をやるのは1人だけ。高校で野球をやるのが彼らの最大の目標。将来ではなく、今なんです。私たちにとって」と話していました。
「その考えに変わりはありません。私は引き分け再試合(07年夏の宇治山田商戦)の経験もありますから、タイブレークにも反対でした。そんなルールで勝ち負けを決められたら、たまったもんじゃないよと(苦笑い)。ただ、これは難しい問題です。未来より今、と言って、そうだという人もいれば、今回の大船渡の結果を受けて、だったら故障してもいいのかと言われると……。本当に難しい。高校野球、プロ野球経験者も意見は真っ二つに分かれている。これという正解はない。しかし、何らかのルールができれば、それに従わざるを得ない。私は球数制限だけで終わらせるのではなく、投手の肩や肘を守るために、細かなルールをつくる必要があると思っています」