投手「球数制限」に反対 07年夏制覇の佐賀北元監督に聞く
高校野球の原風景はなくさず
――会議では木製バットの導入を提案した。
「次回の有識者会議で何を提案するかは今はお話しできませんが、例えば指名打者制があれば投手はずいぶん楽になる。死球によるケガのリスクがなくなる。試合時間に制限を設けるのも手。野球はサッカーと違って制限がない。七回からカウント1―1でスタートすれば試合時間は短くなり、球数も減る。(球数制限による)相手打者の待球作戦はなくなるでしょう。また、サスペンデッドを導入すれば投手の肩の消耗度は小さくなる。試合途中でノーゲームになっても、球数はリセットされません。ベンチ入りメンバーは18人のままでも、登録メンバーを25人にし、そこから18人を選んでもいい。システム化することで本来の高校野球の熱さはなくなるでしょうが、トーナメント制を維持するなら、何より選手の負担を少なくすることが大事です」
――日程の問題は?
「日程を長くしたり、なるべく試合間隔を空けたりするとなると、(運営上の)問題が出てくる。そこが課題でしょう」
――球数制限は、特に部員数が少ない公立校の間で「私立が有利になる」との反対の声が根強い。
「私は公立だから、私立だからと限定的に考えていない。(有識者会議メンバーの)渡辺(元智)さん(元横浜監督)も(私立の立場で)反対されている。どれだけ投手がいても、決勝戦など最後はこの1人という采配になる。プロも同じです。優勝した07年当時、特待生問題があった。『公立は大変でしょう』『公立だからひいきされた』などと言われたが、私立だって、寮生活で生徒が親元を離れるなど大変なことはある。公立も投手を育て、人数が少なければ複数のポジションを守れる生徒を育てないといけなくなるのは明白。その中で、100年続いた日本にしかない高校野球の醍醐味をどう考えるかです」
――醍醐味とは?
「地区大会から負けたら終わりという戦いがファンの感動を呼んできた。ウチのような名もないところが頂点を極めたり、前回の優勝校がいきなり初戦で負けたり、そういったドラマはなくなっていくのではないかということです。高校でもプロでも大活躍する選手は中にはいますが、基本的にその両方は成り立たない。たとえ、佐々木君が私立に行っていたとしても、同じ起用になったかもしれない。大船渡さんの一件を見て、時代の流れを感じたと同時に、高校野球ドラマがなくなると感じた方は多いのではないでしょうか」
――制限を加えれば加えるほど、かつてのドラマ性は失われます。
「だから私としては、高校野球の原風景だけはなくさないでほしい。時代が変わっても、指導者も生徒も白球を追って汗水を流す。そういう泥くささですよね。あまりにもスマートになり過ぎないように。そういう思いを持って、残り2回の有識者会議に臨みたいと思っています」