フェンシング千田健一さん「職場に戻ると仕事がなかった」
長男はロンドン五輪団体銀メダル
モスクワのフェンシング代表では最年少だったため次のロス五輪では自分がチームリーダーとして引っ張るつもりだった。
「ロスで活躍する後輩をテレビで見ながら『彼らよりも私の方が……』という気持ちがありました。この頃から、だからこそ自分に代わる強い選手を育てようと決心して指導に力を注ぎ始めたのです」(千田氏)
千田氏は、モスクワで剣を握れなかった無念さを教え子に託した。鼎が浦高校(現気仙沼高)の教え子、菅原智恵子はアテネからロンドン五輪まで3大会連続出場。長男の健太も高校時代に指導し、北京五輪へ出場、次のロンドン五輪では団体銀メダルを獲得した。
指導歴が長い千田氏は延期された東京五輪でのフェンシング日本勢にはメダル量産もあるとみている。
「男子エペには2019年に世界ランキング1位になった見延和靖(32)がいますし、女子フルーレは若い選手が多くて勢いがあります。もしかしたら、延期となったこの1年は、フェンシング界にとっては追い風になるかもしれません」(千田氏)
表彰式で日の丸を掲げる選手は果たして何人いるか。
▽ちだ・けんいち 1956年8月30日生まれ。宮城県気仙沼市出身。小学5年でフェンシングを始め、宮城県気仙沼高校時代には全国高校総体のフルーレで団体2度、個人で1度優勝した。中央大学卒業後、栃木県の国体補強メンバーに選ばれ、県内の高校に赴任。引退後は高校で指導する一方、日本フェンシング協会強化委員などを歴任し、現在は気仙沼市体育協会事務局長を務める。