人権団体も問題視する「五輪開催国」日本スポーツ界の闇

公開日: 更新日:

世界に報じられた闇

 こうした日本スポーツ界の「闇」に対し、7月20日には国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウオッチがその実態をまとめた報告書を発表。50競技の計800人以上を調査した結果、「日本のスポーツ選手は身体的、言語的、性的なさまざまな虐待を受けている」と指摘。

 アンケートに答えた24歳以下の381人のうち、19%が指導者などから暴力を受けた経験があると答えたとし、五輪開催国として「世界的に深刻な問題に日本が断固として対応し、率先して取り組むことを求める」との声明を出し、世界にも広く報じられた。

「日本スポーツ界の貧困さが露骨に表れている」

 と、スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏がこう続ける。

「大学スポーツについては、日大アメフト部のパワハラ問題もあり、2019年にスポーツ庁が全米大学体育協会をモデルにした大学スポーツ協会を発足。人材育成、地域、社会、経済の発展に貢献するとしながら、その直後にこういうことが起こる。スポーツ界は全体的にコンプライアンスなどと横文字を駆使して、いかにも何かやっていますよ、と形式的に見せかけているだけで、中身は何も変わっていない。日本スポーツ界の暴力問題は構造的な問題。スポーツの現場では子どもから大人の世界までいまだに、戦前の軍隊式の精神論が良しとされ、指導者は成果を出すために選手を徹底的にしごく。人間を育てるなんてどうでもよく、勝ってナンボで、その方針に従わないものは排除するような低劣な資質の指導者がゴマンといます」

 まともな指導者を育てる上で、リーダーシップを取るべきJOCにも問題がある。

「そもそもJOCの人間がスポーツの在り方について理解していない。実際にJOCの幹部に聞いてもそのほとんどが、『オリンピズム』の本当の意味を分かっていない。金メダル至上主義が蔓延し、スポーツを通して人間の尊厳の保持に重きを置き、平和な社会の推進に貢献しようなんて思ってもいない。五輪開催を牽引するJOCがこの体たらくです。諸外国から選手を呼んでスポーツの祭典を開催しようなんて、何をか言わんやですよ」(前出の谷口氏)

 ただでさえ、東京五輪はコロナ禍で開催危機に瀕しているが、そうでなくともこれで五輪の開催国としてふさわしいとは言えまい。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  2. 2

    大山悠輔逃し赤っ恥の巨人にOB評論家《良かった》 FA争奪戦まず1敗も…フラれたからこその大幸運

  3. 3

    パワハラ騒動で楽天退団 安楽智大の去就どうなる? 兄貴分・田中将大の自由契約で話題沸騰中

  4. 4

    過去最低視聴率は免れそうだが…NHK大河「光る君へ」はどこが失敗だったのか?

  5. 5

    田中将大獲得に及び腰なのは《復活うんぬん以前の問題》…“外野”がフォローするほど現場との温度差浮き彫り

  1. 6

    大逆風の田中将大まさかの〝浪人〟危機…ヤクルト興味も素行に関する風評が足かせに

  2. 7

    巨人が“大山資金”で怒濤の上積み…FA石川柊太争奪戦で5球団「3年6億円」横一線の均衡破る

  3. 8

    《次の朝ドラの方が楽しみ》朝ドラ「あんぱん」の豪華キャストで「おむすび」ますます苦境に…

  4. 9

    フジテレビ『ザ・ノンフィクション』で注目された50代男性の裏話と結婚できる中高年の境界線 

  5. 10

    石破政権を直撃!岩屋毅外相につきまとう「100万円」疑惑…米国発カジノ汚職で再燃