甲子園交流戦は情実てんこ盛り 全生中継するNHKへの疑問
「おい、天理はどうなってんだ! 投打の軸であるはずの2年生2人をなぜ、スタメンで使わないんだよ! 投手の方は最後の1イニングだけ投げたけど、それまではストライクが入らない3年生を引っ張ってさぁ。2年生野手の方は出番すらなかったじゃねーか!」
11日のこと。日刊ゲンダイ編集部に中年の男性らしき人物から電話がかかってきた。その声は怒気を帯びていたから、甲子園交流試合で天理(奈良)が広島新庄(広島)に敗れたことに腹を立てていたのだろう。
■投打の軸より3年生
男性の言う「投打の軸である2年生2人」とは、昨秋の近畿大会決勝で大阪桐蔭相手に勝利投手になった右腕・達孝太と、昨秋の公式戦でチーム最多の16打点、4本塁打を放っていた瀬千皓のことだと思われる。達は九回の1イニングに登板、140キロを超す速球を低めに集めて3者凡退(2奪三振)に打ち取った。先発の3年生右腕は八回まで11安打を浴びて4失点、7与四死球。ストライクを取るのに汲々としていたから、もっと早く代えていれば結果は違ったものになったとくだんの男性が思ったのは無理もない。
電話をかけてきた男性は、おそらくトトカルチョファン。痛い目に遭った腹いせだろうが、不可解に映る選手起用をしたのは天理に限らない。
大会初日の10日、明徳義塾(高知)に逆転サヨナラ負けを食らった鳥取城北(鳥取)もしかり。八回終了時点で1点リード。そこまで投手2人で明徳打線を2安打に抑えていたにもかかわらず、九回にわざわざ3人目の投手を投入したことが裏目に出た。
■ベンチ入り20人が出場
11日、4―2で県岐阜商(岐阜)を下した明豊(大分)は、ベンチ入りメンバー20人全員を試合で使った。「こういう舞台に出させてあげるのが、お世話になった人に対する感謝を示すことになる」とは川崎監督だ。
天理も鳥取城北も明豊も、勝利を目指したのは間違いない。勝負事だから勝ちにいくのは当然として、例年と違って今年の交流試合で目につくのは3年生優先、思い出づくりの選手起用だ。
そもそも今回は勝とうが負けようが1試合しかないし、頂点を決めるわけではない。試合形式からして例年とは異なるせいなのか、そこに“情実”が入り込むようなのだ。西日本の甲子園常連校の監督がこう解説する。
「今年は1試合だけ。甲子園で1勝しようが1敗しようが、極端な話、結果そのものの価値は大差ないんです。だったら今年限りの3年生を優先的に使ってあげたいと考える監督は多いと思う。特に3年生は進学や就職を控えているわけで、甲子園でプレーするのとしないのとでは、選手の進路も変わってきますから。もちろん監督はみな、勝ちにいっているのですが、例年と比べたら勝利への執着心は薄いと思いますね」