プロ野球「即戦力ドラ1候補」大学・社会人4人の武器と課題
佐藤輝明(近大・内野手・21歳)
10月26日のプロ野球ドラフト会議が1カ月後に迫った。巨人が1位指名を示唆した近大の「糸井2世」佐藤輝明内野手(4年)、早大の最速155キロ左腕・早川隆久投手(4年)ら、今年は大学、社会人に逸材が多い。即戦力1位候補4人を取り上げた。
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巨人の大塚淳弘球団副代表が先日、「野手の即戦力でいこうという方針。今足りないのは投手と外野手。特にパワーヒッターが足りない」と佐藤を示唆し、一躍注目を浴びる存在に躍り出た。
187センチ、94キロ。右投げ左打ちのスラッガーで、圧倒的な飛距離が武器。5日のリーグ開幕戦には12球団23人のスカウトが集結した。現在は三塁を守るが、外野もできる。巨人は経験のある外野手として評価している。
ある球団の関西担当スカウトがこう明かす。
「大柄の左打者でフルスイングができる。観客がどよめく強肩で足も速い。ソフトバンク・柳田、近大の先輩でもある阪神・糸井タイプです。スカウトの世界では『いい投手は毎年いるけど、いい野手は毎年いないから取っておけ』と言います。将来の米球界挑戦を念頭にメジャーの動画を見ることが多いそうで、下からかち上げる感じのスイングは外国人選手に近い。トリプルスリーが狙えるスケールの大きい野手。複数球団の競合は必至です」
短所はあるのか。
「巨人は外野手として評価しているようですが、三塁手としても決してヘタというわけではなく、捕球に少し難があるという程度。打撃面では、タイミングの取り方がうまくないので変化球に対してもろさが出ることがあります」(前出のスカウト)
巨人、阪神、ソフトバンク、オリックスなどが競合する可能性がある。
早川隆久(早大・投手・22歳)
最速155キロを誇る左腕は、ロッテなど即戦力左腕が補強ポイントのチームによる1位競合は必至とみられている。
180センチ、80キロ。アマ野球に詳しいスポーツライターの安倍昌彦氏はこう言う。
「大学4年間でウエートトレーニングに励んだこともあり、線が細かった高校時代とは別人のように体が立派になった。パワーアップしても球筋が乱れず、四球も少ない。1人の打者に対し、3球で『1ボール2ストライク』の投手として有利なカウントをつくれる。左投手ではなかなかいません」
しかし、課題もある。
関東地区担当スカウトによれば、「昨年の大学3年時は、強化した肉体をコントロールできないのか、力任せの投げ方で体の開きが早くなることもあった。左で150キロを超える球を持っているのだから、大学生相手には圧倒的な投球をしていいはずなのにそれができないのは、打者が球速表示ほどの速さを感じないからでしょう」。
この点について安倍氏は、「木更津総合高時代の投げ方に改善のヒントがあるのではないか」と、こう続ける。
「高校時代の早川は130キロ台半ばの速球でも、まるで145キロの球を投げているようでした。柔軟性があり、体とうまく連動。リリース時の一瞬に力を集約する。ベース板の上でも球の回転がほどけない『生きた球』を投げていた。これは早川自身もわかっていると思いますが、速い球を投げられるようになった今、高校時の投球の感覚を思い出すことができれば、今以上に速球の質がよくなるかもしれません」
栗林良吏(トヨタ・投手・24歳)
最速153キロ右腕は高校まで内野手。主に遊撃を守っていた。マウンドに上がるようになったのは、愛知黎明高2年秋から。この頃は野手兼任の二刀流だった。2年夏に愛知大会決勝まで進んだが、甲子園には届かず。投手としての評価が高かった名城大に進むと、1年春からリーグ戦に登板し、本格的に投手として歩み出すことになった。
177センチ、80キロ。3年時に中日、楽天でプレーした山内壮馬氏がコーチに就任し、これが転機となった。在京球団スカウトがこう言った。
「山内コーチの指導で、3年生になると急に体が大きくなって、春(中京大戦)にノーヒットノーラン。4年時は山内コーチに教わったというフォークボールを投げ出して、秋には奪三振数が投球回数を上回った。山内コーチとの出会いが飛躍のきっかけになったとみています。実質、投手専任となったのは大学からで、まだ6年目。使い減りしていないのがいいですね」
大学通算32勝。4年時のドラフトでは「2位までならプロ、3位以下ならトヨタ自動車入り」という条件をつけたため、指名漏れに終わっている。
愛知県愛西市出身。野球を始めてからずっと愛知でプレーしてきた。地元中日はドラフト1位候補に挙げているが、他球団と競合する可能性もある。24歳にして初めて地元を離れることになるか。
入江大生(明大・投手・22歳)
作新学院高3年時、今井(現西武)とともに夏の甲子園で優勝。野手だった入江は、明大進学後に本格的に投手に転向した。187センチ、84キロの恵まれた体から最速153キロを誇る右腕だ。安倍氏が言う。
「入学後は体づくりから始め、ようやく投手らしい投手になってきたという感じ。キャリア不足の点はありますが、大学生でありながら、伸びしろをものすごく感じます。4年春までの公式戦登板はわずか72回3分の2で肩、肘は使い減りしていない。フォークが武器で、上背があり、球に角度がある。投球フォームも力任せではない。主に2000年代に広島の抑えとして活躍した永川勝浩(188センチ、通算38勝、165セーブ)のように、抑え、セットアッパーの1イニングを任せられる投手になる可能性があります」