ID野球の波にのまれ…プロ球界で策士と異能の人が消える日
井上氏は、当時のプロ野球界には存在しなかったメンタルトレーナーに住職を起用しようと考えたり、バッテリー間のサイン盗みを防ぐために乱数表を作ったりするなど、なかなかのアイデアマンだった。
後にスコアラーとして巨人に移籍。1989年の近鉄との日本シリーズ前には「満塁でも4番のブライアントは敬遠する」と発言し、近鉄ベンチに“陽動作戦”を仕掛けてチームを日本一に導く原動力となった。
最近はビッグデータを駆使したID野球が注目されているが、あくまでも主役は選手、監督、コーチ、フロントといった「人」だ。井上氏のような「策士」や「異能の人」の活躍の場が限られつつある状況は寂しい限りだ。
▽富岡二郎=スポーツジャーナリスト。1949年生まれ。東京都出身。雑誌記者を経て新聞社でスポーツ、特にプロ野球を担当。