追憶のマラドーナ 「神の手」と「5人抜き」ゴールの思い出
アルゼンチンーイングランド戦は、アルゼンチンが一方的に攻めながらスコアが動くことはなかった。同行のカメラマンとは「前半30分過ぎに撤収してタクシーでプエブラに向かう」と約束していた。後ろ髪を引かれる思いでスタジアムを後にし、タクシーに乗り込んだ。プエブラまでは片道約2時間のドライブだ。
カーラジオでは、試合の実況を早口で伝えてくれりれるが、スペイン語なので詳細は不明である。
タクシーの心地良い揺れが睡魔を招き、ウトウトしていると突然、アナウンサーが「マ~ラァドォ~ナァ~!」と名前を絶叫しながら連呼するではないか! 一緒になってドライバーも興奮している。
これはただ事ではない。マラドーナが何かしでかしたに違いない。
確認できず、ヤキモキしながらタクシーに揺られ、プエブラのスタジアムに付くや否や、プレスセンターに駆け込んだ。 大会スポンサーであるJVC(日本ビクター)のテレビが、マラドーナの「神の手ゴール」(後半51分)と「5人抜きゴール」(55分)を繰り返し放映している。