中村稔さん死去 巨人で「投手王国」を築いた伝説のコーチ
プロ野球の監督は12人。野球人にとっては大きな夢である。ところが中村さんは考えた末に監督就任を断る。「せっかくのチャンスだったのに」と聞くとこう答えた。
「家族のことを考えるとな」
81年、長嶋解任のあとを受けた藤田監督に対する世間の風当たりは強く、苦労を重ねた。それは家族も同じだった。間近に見ていた中村さんは監督業の大変さを痛感したのであろう。
「家族うんぬん」は本音だったろうが、それだけではなかったのではないか。中村さんは投手コーチを天職と信じていたのだと思う。
■90年の巨人は完投70、二桁勝ち投手が5人
90年、巨人は2位広島に22ゲームをつけ、88勝42敗でリーグ優勝を果たした。チーム防御率は2.83。130試合で完投が70。今、なおシーズン最多記録である。斎藤雅樹、桑田真澄、木田優夫、香田勲男が10勝以上を挙げ、防御率2点台で上位4位までを独占。宮本和知も14勝し、二桁勝ち投手5人という投手王国を作った。