また五輪特例…「無症状選手は最短7日で競技復帰OK」に非難ゴウゴウ
五輪選手に対する新型コロナウイルス対応方針がコロコロ変更されている。IOC(国際オリンピック委員会)は表彰式の写真撮影で「最大30秒間マスクなし」を許可。これには理解が広がっているが、大会組織委員会が認めた「無症状陽性者は最短7日で競技復帰OK」には非難ゴウゴウだ。厚労省の基準によるものとしているが、一般市民ではこうはいかない。ゴールポストを都合よく動かすやり方に、ますます不信感が強まっている。
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■SNSには非難の書き込み続々
新型コロナに感染した選手をめぐって組織委は26日、無症状で隔離期間を終えるなどの条件を満たせば競技に復帰できるとの見解を示した。サッカー男子の南アフリカ選手2人が陽性判明後、22日の日本戦を欠場したものの、25日のフランス戦に出場したためだ。
具体的には、無症状の場合、専用の宿泊療養施設で検体採取日から6日間隔離し、6日後以降に24時間以上の間隔を空けたPCR検査で2回連続陰性となれば、退院と試合出場が可能となる。最短7日で競技に復帰できる。
さすがにSNS上では〈選手特権ですか〉〈オリンピックは何でも特例なんですね〉〈都合のいいようにやりたい放題でルールを作っている〉〈基準の事後変更なんてメチャクチャ〉――などと、非難の書き込みが続々だ。
問題が起きるたびにルール変更
それにしても、組織委の言う「厚労省の基準」とは一体何なのか。
厚労省は今年2月25日付で、自治体向けに「健康局結核感染症課長」による通知を発出。無症状者の退院基準などを改定している。
「検体採取日から10日間経過した場合、退院可能」「検体採取日から6日間経過後、24時間以上間隔を空け、2回のPCR検査陰性を確認できれば退院可能」としている。宿泊療養等の解除基準も同様だ。
しかし、一般の国民が陽性となった場合、7日間で復帰することはまずない。PCR検査を2回受けられることもない。
昭和大医学部客員教授の二木芳人氏(臨床感染症学)はこう言う。
「新たに大会に導入された退院・解除基準が一般の新型コロナ患者に適用されていないのは、PCR検査態勢が十分ではないからです。検査件数を絞っているため、一定期間隔離して回復したものとみなし、社会復帰させている。その点では、あからさまな五輪特例です。組織委などは外部と遮断するバブル方式に自信を見せていましたが、完璧に包み込めるわけがなく、実際に陽性者が次々に判明している。問題が起きるたびにルールを変更する綱渡りを続けることによって、一歩間違えば巨大なクラスターを発生しかねません」
結核感染症課は通知と同日付の事務連絡で、関連する質疑応答集も一部改正。「無症状病原体保有者の退院基準に6日間経過とありますが、この根拠は何ですか」との設問に、「ダイヤモンド・プリンセス号における無症状病原体保有者の感染性に関する研究などを参考にしています」と回答している。
しかし、ダイヤモンド・プリンセス号の検証は十分になされたと言えるのか。かえって不安しかない。
IOCのバッハ会長は「選手村に入る85%がワクチンを接種して来日する」と感染対策に自信たっぷりだったが、すでに入村した選手16人(26日現在)の感染が判明している。
「かなり多い印象です。組織委は個人の特定を理由に陽性者の詳細を明かしませんが、リスク管理の面で言っても、ワクチン接種済みか否かは公表すべきです」(二木芳人氏)
ひょっとすると、ルール変更を強行しなければ大会を維持できないほど、感染者が急増しているのではないか。