フェンシング男子エペ団体「金」見延和靖<3>今後もいい状況が続くような仕組みづくりや環境づくりを
見延和靖(34歳、フェンシング男子エペ団体、金メダル/ネクサス)
五輪でメダルを獲得したスポーツは競技人口が増える。日本フェンシング協会の前会長、太田雄貴氏が2008年北京五輪のフルーレ個人で銀メダルを獲得した当時、日本のフェンシング界も大きな盛り上がりを見せた。しかし、それは一時的な“五輪バブル”という懐疑的な見方があるのも事実だ。
「金メダルでフェンシング界が変わっていくためのきっかけはつくれたかなとは思うけど、それだけでは発展しないと思うし、広がっていかないなと思う。じゃあ何をやったらいいかというとすごく難しい」
■競技発展のハードルを上げる高額な設備費用
ハードルを上げている要因のひとつが、高額な設備費用にある。道具の値段はいわゆる“ピンキリ”だが、たとえばエペの場合、練習用の剣セットこそ7000円程度とはいえ、マスクやユニホームなど防具を揃えると10万円はかかる。審判器セットは練習用の安いものでも20万円以上と高額だ。
「チャンバラだったらそこらへんでもできますけど、フェンシングをしっかりやろうと思うと特別な電気審判器が必要になる。体験するだけなら安くて5万~10万円くらいで揃えられますが、それは個人用のキットであって、ランプがつく審判器を揃えるというのはかなり難しい。興味を持ってくれた人が競技を始めるには環境が手薄なのが現実問題としてある。エペは分かりやすくて一番普及につながりやすい種目だと思うので、僕たちが勝ち続けて日本が強いと証明し続けることが一番大事なこと。体験や見学もしてほしいですし、(自身が所属する)ネクサスのフェンシングクラブチームにも多数の体験の応募があったみたいなので、僕自身も楽しさを伝えられたらと思う」