ヤクルト選手が明かす1995年日本シリーズ秘話 秦真司氏・飯田哲也氏

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野村監督のイチロー対策は「インハイ」ではなく「外角攻め」だった

 1995年以来、26年ぶりとなるヤクルト対オリックスの日本シリーズが開幕する。ヤクルト・野村克也監督の「ID野球」が、絶好調だったオリックス・イチローをいかに封じるかに注目が集まった。ヤクルトが4勝1敗で制した当時の日本シリーズに出場した選手たちが秘話を明かした。

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 ◇  ◇  ◇

■秦真司(元ヤクルト・外野手)

 シリーズの焦点は、この年、打率.342で首位打者、打点王、盗塁王、最多安打、最高出塁率も獲得し、「5冠」に輝いたイチローをいかに封じるかだった。

 野村監督は「イチローを攻めるには、内角に始まり内角に終わる。いかにインハイを攻め切れるか」などとマスコミに公言。これはイチローに意識付けするためで、実際は「外角中心」を前提に「高めのボール球の速球」「外角低めの変化球」「内角の速い変化球」「内角低めの落ちる球」を効果的に使うことが、バッテリー間で徹底された。

 私は第4戦、第5戦に左翼でスタメン出場。実はインハイではなく、外角を攻めろということであれば、逆方向のレフトにも強烈な打球が飛んでくる可能性が高い。捕手出身で外野守備にあまり自信がない私にとって、イチローの打席は緊張したものだ。

 意識したのは定位置より深く守ること。左中間やレフト線を抜かれた時、三塁打にせず、二塁で止めたいからだ。

 ヤクルト投手陣は第4戦まで16打数3安打、打率.187とイチロー封じに成功。間違いなくこれが勝因である。

勝因はイチロー封じだけじゃなかった

■飯田哲也(元ヤクルト・外野手)

 野村監督は常々、「短期決戦では相手の主力だけには打たせるな」と話していました。これはこの年の日本シリーズだけでなく、1992、93年の西武戦では清原和博がその対象。若松勉監督になってからの2001年もその伝統が生きており、近鉄の4番・中村紀洋を5試合で18打数3安打に抑えて日本一になりました。

 ただ、イチローのバットは封じることができても、守備はどうしようもない。当時のオリックスの外野はイチロー、本西厚博さん、田口壮と名手揃い。内野も三塁の馬場敏史さんを中心に鉄壁の守備でした。僕は5戦全てでヒットを打っていますが、「いった!」と思った当たりがことごとくアウトにされた。

 それでもヤクルトが勝てたのはイチローに打たせなかっただけではなく、オリックスの守護神・平井正史が不調だったからです。2、3戦目はいずれも平井を打ち崩して勝利。もし、平井が万全ならどうなっていたか。

 さらに言えば、日本シリーズが神戸で開幕というのも良かった。敵地で2連勝し、神宮に戻って2勝1敗。オリックスが再び神戸に戻る前に決着をつけることができた。あれだけ対策を練っていたイチローも、最後の5戦目は2安打と当たり始め、チーム内には「まさか……」と嫌な雰囲気が漂っていました。

 もし神宮スタートだったら、もし神戸に戻っていたら……。その時は日本一球団が逆になっていた可能性も十分あったと思います。

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