なでしこを追いかけて…オランダ入国は実に呆気ないものだった
コロナ禍のご時世ではあるが、意を決して「なでしこジャパン」のオランダ遠征への帯同を決めた。
すんなり覚悟が決まったわけではない。コロナ感染状況をチェックする毎日。日本のみならず、とにかくオランダ情勢から目が離せない。なぜなら、ヨーロッパは目下、感染再拡大の真っただ中だからだ。
それでも池田太監督の初陣だ。行くしかない。えいや! と取材申請を提出したその翌日、オランダ政府が部分的ロックダウンを発表した……。
なんというタイミングだ。それでも国際親善試合は決行されるということで、オランダ出入国に必要な書類の情報を引き出し、準備に取りかかる。どっちに転んでもいいように、渡航用のワクチン接種証明書だけは早々に申請をしておいた。
「今日できることは、なんとか明日にまわせないものか?」精神でやりくりをする私にしては上出来だ。あとは以前から目をつけていたエアーチケットをポチろうとしたとき、一本の電話が鳴った。
出発予定日(11月21日)の午前中に仕事が入った。オランダから帰国後は、2週間の隔離が待っている。出国までは、働けるだけ働いておこう。こうして直行便に別れを告げ、泣く泣く経由便を手配することになった。
自宅隔離を選択するため成田空港一択
何はともあれ、約1年9カ月ぶりの海外出張だ。きっと忘れものも多いはず。あとは現地で調達しようと準備もそこそこに空港へ車を走らせた。
帰国者は公共交通機関の利用が認められていないため、自家用車で乗り付けられる成田空港を選ぶ。帰国した際に車を空港まで持ってきてもらえる。何が何でも自宅隔離を選択したい私には、成田空港一択だった。
出国当日は狙い通り、早めに着いたし、チェックインを済ませたらラウンジでビールを流し込もう。これが海外出張の一番の楽しみなのである。
ところが、だ。ラウンジ営業はもうすでに終了したというではないか。これから3時間後に飛ぶというのに!?
非常事態宣言が解かれ、陽性反応者も減り、世の中が日常を取り戻している風なので……すっかり忘れていた。まだ海外へは、限られた人数しか渡航できない現状を。
「少々混みあってる」機内の実状
空港はガラガラ。コロナ禍前のそれとはまったく異なる雰囲気が、一歩足を踏み入れると即座に分かる。午後7時の段階で店舗はほぼ閉店。いや、そもそも営業をしていないとみた。
国内便メーンの羽田空港には人が戻ってきているだけに、成田空港がまだこんな状況にあるとは思ってもみなかった。
「本日は少々混みあっているかもしれません」
搭乗手続きの際に地上係員の方に告げられたが、搭乗してみれば私のシート列の前後左右には誰も座っていなかった。それはそれでフルフラット状態で爆睡できてラッキーではあったが、これで「少々混みあってる」状態なのだとすれば、緊急事態宣言下の航空各社は、かなり苦労したのだろうと想像する。
しかし、国が変われば状況は一変する。経由地へ到着すると各店舗が、眩いライトを煌々とさせながらガッツリ営業している。変わったことと言えば、そこにいる全員がマスク着用ということくらいか。
いろんな国の人が行き交えば、感染対策の受け止め方もさまざまだ。乗り継ぎを待つゲート前でひと際目を引いたのは、全身防護服に身を固めた中国人のご夫婦。マスク、手袋、フェイスガードまで着用している。
安心を得るなら、ここまでしなければダメか。でも持っている鞄は何にもくるまれてないけれど、そこに雑菌は……いや、それは言うまい。人それぞれなのだから。
ドキドキしながら入国審査へ
こうして降り立ったオランダ・スキポール空港。ワクチン接種証明書、ワクチン接種に関する申告書、健康申告書などなど必要書類を抱えて、ドキドキしながら入国審査の列を進む。
さぁ〜何を聞かれるか。ワクチン関連の単語も覚えてきたし、全部答えてやるぞー! と意気込んでいると「何しにオランダへ?」「何日滞在?」「宿泊先は?」——。
ん? いつもと変わらない。
「はい、次の人!」
かなり時間をかけて書類を整えたのだけど……オランダ入国は実に呆気ないものだった。=つづく