羽生結弦が取り憑かれた「4回転半」という魔物…五輪3連覇逃すも“夢の大技”公式戦初認定
94年ぶりとなる五輪3連覇はならなかった。
10日のフィギュアスケート男子フリー。羽生結弦(27)は、冒頭で挑んだ史上初のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ=4A)で転倒、直後の4回転サルコーでも着氷に失敗して転倒した。その後は持ち前の表現力豊かな滑りでフリーの楽曲「天と地と」を舞ったものの、得点はフリー3位の188.06点。ジャンプ失敗による出来栄え点の大幅マイナスが響き、8日のショートプログラム(SP)との合計で283.21点に終わり、4位で表彰台を逃した。
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五輪連覇を果たした2018年の平昌大会後、羽生は「公式戦で初めて4Aを決めたい。それが僕の夢」と、ことあるごとに口にするようになった。
周囲の五輪3連覇の期待をよそに、「五輪より4A」と前人未到の大技の練習に没頭。その過程で昨年11月の今季グランプリ(GP)シリーズを前に古傷の右足首を負傷、「右足関節靱帯損傷」という大けがをした。4Aの練習が原因とされ、2試合の出場を予定していたGPシリーズの全戦欠場を余儀なくされながら、それでも4Aへの挑戦をやめなかった。
オーサー氏とも溝、2年間は一人で4A突き詰め
「ぶっつけ本番で臨んだ昨年12月の全日本選手権当日の朝まで4Aの練習をしていたという羽生は『跳べなさ過ぎて、失望して、精神がぐちゃぐちゃになっていた。(これまで)何回も何回も体を(リンクに)打ちつけ、本当に死にに行くようなジャンプをずっとしていた』と言っていた。4Aに取り憑かれているような印象を受けた。フィギュア界の絶対王者に上り詰めた羽生にとって『世界初の4A成功』が唯一のモチベーションなんだと思う。トータルでの演技の完成度を求めるコーチのオーサー氏とも溝ができ、この2年間はひとりで4Aを突き詰めてきた。今回のSPでのミス、フリーでの2度の転倒は4Aに没頭し過ぎた影響もあると思う」(フィギュア関係者)
今回の北京五輪でも本番2日前に北京入りするまで、仙台市内のリンクで深夜まで4Aを跳んでいたといわれる羽生。フリー後、「報われない努力だったかもしれない。でも、頑張りました」と声を震わせ、進退を問われると「少し考えたい」と現役続行の明言を避けた。
冒頭で転倒した4Aはしかし、公式大会で初めて「4回転半」として認定された。心身の負担を考えれば、「認定」で憑き物が落ちてくれればいいのだが……。