佐々木朗希の覚醒は「ロッテだから実現」19年ドラフトでセ球団が一斉に尻込みした深層

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 佐々木朗希のプロ3年目を迎えての覚醒は、「ロッテだから実現した」との声も少なくない。

 元阪神投手の藤川球児氏は17日、テレビ番組でロッテが佐々木朗希をじっくり育ててきたことに関連して、こう言った。

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「巨人とか阪神というような老舗球団になると、メディアが黙っていない。『なぜ使わないんだ』『ドラフト1位でまったく使わないなんて球団は何をしているんだ』と。それにファンも印象操作されて、『ダメなドラフト1位だ』となる。それがセ(リーグ)とパ(リーグ)の違いですね」

 2019年ドラフトで佐々木朗希を1位指名したのは、ロッテ、西武、楽天、日本ハムと全てパ球団。一方のセ球団は、ヤクルト、巨人、阪神が「即戦力に近い」といわれた星稜の奥川恭伸を1位指名した。

 佐々木朗希は高校3年時、プロとの面談でプロ入り後のトレーニングや練習環境について質問した。高校時代のデータを活用しながら、体づくりを含めて一からスタートしたい意向もあった。セのスカウトは「3年かけてじっくり育成した前例はない。どうしてもというなら、メジャーでやるしかない」と漏らすなど、壮大な育成プランに及び腰になった球団も多かった。

即戦力志向が強いセ・リーグ

 巨人は、スカウト部が佐々木朗希にゾッコンだったが、原監督(顔写真)が即戦力を欲しがり、奥川を1位指名したといわれているように、セ球団は総じて、大学、社会人の即戦力投手を上位指名する傾向がある。昨年のドラフトも、パの4球団が高校生を1位指名した一方、セは2球団にとどまった。

 そもそもパには、松坂大輔、ダルビッシュ有、田中将大、大谷翔平、山本由伸といった高卒の名投手を輩出してきた実績もある。

 大分・津久見高から1988年ドラフト1位でヤクルトに入団、プロ1年目から23試合に登板した川崎憲次郎氏は、「パ球団がドラフトで多くの好投手を引き当てていることもありますが……」と前置きした上で、こう言った。

「セの場合は特に巨人、阪神はメディアが多くて注目度が高い。全体的に見ても、『いち早くドラフト1位の選手を一軍へ』という営業面を重視する名残があるかもしれません。一方のパは、セに先行する形でメジャーのトレーニングやコンディショニングのスキル、データ分析術を取り入れるなど、時代に合った体づくりをしている。選手に無理をさせたり、焦らせたりしない傾向も強いと感じます」

■指名打者制の有無にも関係が

 指名打者制の有無も関係がありそうだ。ロッテ、西武で活躍した名球会会員の山崎裕之氏が「接戦になると試合中盤で先発投手に代打を送るケースが多いセに対し、戦術上、その必要性が少ないパの投手は総じてセより長いイニングを投げる。投手の成長を促し、好投手が育つ土壌になっている。投手のレベルが上がれば、必然的に打者のレベルも上がる。DH制にはそういう好循環を生む利点がある」と言えば、前出の川崎氏もこう話す。

「投手にとって、打者が9人並ぶパの方が負担は大きい。休むところがありませんから。スタミナや神経を使う分、投手は能力が求められます」

 もしセ球団が佐々木朗希を獲得していたら、果たして規格外の投手になっていたのかどうか……。

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