権藤博さんから交代を告げられ、ベンチ裏の控室に入るなり床にへたり込んで動けなかった
「そうですか……」
アイシングをしたまま控室の床に座り込んでいた私は、トレーナーからこう言われて試合終了を知った。
■自分が抑えればチームは優勝できた
終了と同時に、仰木監督以下の近鉄ナインは三塁側に整列、帽子を取ってスタンドの近鉄ファンに深々と頭を下げた。仰木監督が「これだけのファンが応援に来てくれたんだ。最後、みなで挨拶をしよう」と音頭を取ったらしい。ベンチ裏にいた私は後になって、ファンに挨拶したことを知った。
やぶれかぶれみたいな気持ちで投げた1試合目と違って、2試合目は1点を勝ち越し、イニングの頭からの登板だった。あと2イニング、自分が抑えればチームは優勝できた。
スタンドには泣きながら応援してくれる人がいたし、ネット裏の記者席では番記者の人たちが祈るような気持ちで見ていた。そういった人たちの表情がハッキリと見えていただけに、申し訳ないというか、期待に応えられなかったショックは大きかった。(つづく)