優勝マジック「1」で迎えた89年10.14 最後の打者には9球すべてストレートを投げた
この回先頭の山本和範さんの当たりは右翼への大飛球。一瞬、ヒヤッとしたものの、右翼手・鈴木貴久さんがジャンプしながら逆シングルでキャッチ。体ごとフェンスに激突する超ファインプレーに救われた。
次打者の平凡な二ゴロはイレギュラー、バウンドは上に大きくハネたが、二塁手・大石大二郎さんがジャンプして捕球してくれた。
名手2人のファインプレーで2死。最後の打者は見逃し三振に打ち取った。覚えているのは9球すべてストレートを投げたということ。1年前は捕手の山下和彦さんのストレートのサインにクビを振って投げたスクリューボールを左翼スタンドに運ばれた。
■サインが出なくなった
捕手は1年前と同じく山下さん。何しろ初球からストレートしか投げないのだから、打者も当ててくる。ファウルで4球粘られた。山下さんも1年前のことがあるだけにあうんの呼吸だろう。途中から、分かったよという感じでサインが出なくなった。
最後、ストレートで見逃し三振を奪った瞬間は本当にしびれた。ついにやったと、思わずガッツポーズをつくっていた。
優勝の瞬間、ベンチからナインが飛び出す。マウンド付近で仰木監督の胴上げが始まると、スタンドのファンもなだれ込んできて、もみくちゃになった。(つづく)