大谷翔平「エ軍残留」は大正解! トレード移籍なら“リアル二刀流”の保証はどこもナシ
スカウトを受けるも「都会では埋もれる」と花巻東へ進学
大谷が高校に進学する際の話だ。将来、プロ野球選手になるような中学生は数十もの高校からスカウトされたりもするが、当時、大谷が所属していた一関シニアのコーチをしていた父親の徹さんは以前、こう言っていた。
「(菊池)雄星クンのように県内どころか関東からもとか、それほどじゃありませんでした。僕の先輩が横浜の方でコーチをしていたので、一度、遊びがてら見に行くわと。そこも含めて(誘いがあったのは)4つくらいだった」
「できれば甲子園を狙えるところでやってもらいたいというのはありました。勝てるかどうかはともかく、チャレンジはさせてやりたいと。それに都会の学校は人数もたくさんいますし、埋もれてしまう可能性もある。中学のときにあれだけ打って活躍した子がなぜ、というのはこのあたりでもありますから。そういった理由から花巻東なら大丈夫だと思ったのです」
大谷も自分の意思で花巻東への進学を選ぶことになったうえ、「都会の学校は人数もたくさんいますし、埋もれてしまう可能性もある」という父親のスタンスは2017年オフ、ポスティングシステムでメジャー入りしたときの選択に通じるものがある。
大谷獲得に名乗りを上げながら2次選考の面談にすら進めなかったヤンキースのキャッシュマンGMは、「我々がビッグマーケットをもっていて、(北米の)東部にあることは変えられない。この街やファンには誇りをもっている」とコメントした。
大谷はつまり、東海岸の大都市にある球団を敬遠した。ファンやメディアがシビアで、すぐに結果を求められるチームを嫌ったのは、自分を二刀流選手として長い目で見て、辛抱強く起用し続けて欲しかったからだろう。
「子供たちには自分の進路は自分で決めなさいとずっと言ってきました。僕自身、人と同じことをしちゃいけないというのがあって、人と同じことをしても、人と同じようにしかならないとも思ってきました」
徹さんはこうも言っていた。大谷にとっては勝つことより何より、メジャーで「人がやっていない」二刀流で結果を出すことが最優先だったのだ。
昨年、「ヒリヒリする9月を過ごしたい」と言ったのはあくまでも希望であって、二刀流選手としてプレーすることが最も重要であることは、投打ともメジャーで一流と認知されたいまも変わらないはずだ。
■チームの勝利より「二刀流」が最優先
エンゼルスは何しろ、どの球団よりも二刀流に理解がある。DHのポジションは大谷のために空けてあるし、中6日の先発ローテーションは大谷中心に組まれたもの。投打同時出場の「リアル二刀流」は、以前から大谷が望んでいたことでもある。大谷にとってはエンゼルスで「ヒリヒリする9月を過ごす」のが理想であって、投打に選手がそろい、本気でプレーオフを狙うようなチームが、ここまで大谷に配慮できるとは思えないのだ。
エンゼルスが年俸50億円前後のトラウトとレンドン(32)の2人を抱えたままオフに補強をしたところで、来季勝てる保証はどこにもない。というか、ほとんど不可能に近い。だとすれば、来季も思う存分、投打の個人成績を追求できる。それがトレードで移籍するようなことになれば、チームは勝てても、いまほど二刀流に打ち込める保証はない。そうなれば“本末転倒”だ。今季中の移籍がなくなったとすれば大谷にとって、願ったりかなったりではないか。