中東初のサッカーW杯開催 “不思議なスポーツ新興国”カタールってどんな国?専門家に聞いた
移民の人権問題は世界中からバッシングが…
【Q】国民の生活は?
【A】カタール人就業者の過半数が公務員です。公務員は拘束時間が短く、具体的な実務は移民として雇った外国人がこなす、なんてこともザラ。それなのに給料がかなり高い。例えば、石油会社やガス会社は国営企業(実質的な公務員)ですが、19年のデータでは平均年収が2000万円超となっています。公務員になれなかったら民間企業に勤めながら公務員を目指すケースが多く、中には職に就かず、失業手当で暮らす人もいる。それでも十分に生活できますからね。
そんなカタールの女性の進学率は意外にも高い。女性の労働市場が限られているので、進学することでモラトリアムをつくることが主な目的です。大学在学中に結婚するケースが多く、出産する場合は休学を選びます。育児はメイドに任せられるので、学業に支障はほとんどありません。
余談ですが、教職は男性に不人気なので同じアラビア語を使うエジプト人などを雇っています。しかし、子供たちが外国人教師を「移民の労働者」とみなしてバカにした態度を取ってしまうこともあるそうです。
【Q】問題になっている移民の人権は?
【A】カタール国籍を持っているのは全人口の1割ほどで、彼らは医療費や留学を含む教育費など、あらゆるものが無料といった手厚い福祉制度がある。その一方、残り9割を占める移民の扱いは決して良いものではありません。国の中枢機関でブレーンとして活躍するごく一握りの外国人は別として、たとえばW杯の施設建設に携わる肉体労働者は厳しい環境に置かれています(英ガーディアン紙によると、2010~20年の間に6500人以上の移民が死亡)。
これが人権問題として世界中からバッシングされている。それでも、カタール人の大半が移民をメイドとして雇っているし、16年までは「カファラ制度」といって、雇用主が移住労働者の保証人となるシステムもあった。メイドの賃金はピンキリとはいえ、住み込みなら月5万円ほどから雇えるという感覚です。雇用者が労働者のパスポートを取り上げることも横行していたし、移民に対する彼らの常識は世界と大きなギャップがあるのです。W杯をきっかけに世界から注目を浴び、多くの問題が浮き彫りになった今が転換期かもしれません。
【Q】食事は?
【A】アラビア半島はどこも似たような気候の砂漠地帯なので、国ごとに大きな特徴の違いはありません。一般的に有名なのはカブサといって、米の上に味の付いた肉をのせた料理です。家庭で食べる際は、大皿に盛りつけたものを皆で囲んで手掴みで食べる。お米は残す場合が多く、刺し身の下に敷くツマみたいな役割です。街には外国のチェーン店や、移民が経営する店などが増えているので、観光客が食事で特に困ることはないでしょう。