“世紀の誤審”で批判浴びた技術委員が明かす 米国に敗れた日本が「0.01」差で準決勝に進んだ顛末
山中正竹(横浜球団専務、現全日本野球協会会長)2006年大会技術委員(1)
「山中技術委員、提訴せず」
2006年春。第1回WBCのアジア代表技術委員として渡米した山中氏(横浜ベイスターズ専務)は、日本でスポーツ紙を読んだ家族から、「こんなことが書かれているけど、一体何があったの?」と一報を受けた。
3月12日の2次ラウンド米国戦。3-3の同点で迎えた八回表1死満塁で岩村(ヤクルト)が左飛を打ち上げた。三走の西岡(ロッテ)がタッチアップ。勝ち越しのホームを踏み、日本ベンチは大いに沸いた。しかし――。
米国側が西岡の離塁が早いと抗議し、なんとデービッドソン球審が独断で判定を覆してアウトとしたのだ。
「世紀の誤審」としてWBC史に刻まれたこの一件、山中氏は思わぬ形で批判を浴びた。
「試合後、報道陣に囲まれ、『アウト、セーフの問題なので、提訴の対象にならない』とコメントしました。これを受けて一部のスポーツ紙に『日本の山中は提訴をする気はない』というトーンで書かれてしまった(笑)。しかし、私は大会の技術委員であって、日本代表の一員ではない。審判の判定に対して提訴する権利は日本代表の王監督にあり、むしろ私はあくまで提訴を受ける側。翌日、報道陣を集めてその旨を説明しました。書いた記者も謝ってくれましたが、私は当時、横浜に在籍していましたし、本来はいけないことですが、主催者が“足”を準備してくれず、日本代表と同じ飛行機、バスに乗って移動していた。日本代表の一員と勘違いされてもおかしくなかったのも確かです」