大谷の鬼気迫る咆哮が浮足立つベンチのムードを変えた…メキシコ戦サヨナラ勝利の舞台裏
米国で決勝ラウンドを戦った侍ジャパン。ベンチのムードは準決勝で敗退した過去2大会と明らかに違った。大谷翔平(28=エンゼルス)がいたからだ。
準決勝のメキシコ戦、4-5で迎えた九回裏に先頭の大谷が初球を二塁打。一塁ベースを回る手前でヘルメットを投げ捨て、二塁ベース上では鬼気迫る表情で「カモン、カモン!」と咆哮した。
その姿に導かれるように、吉田(レッドソックス)が四球でつなぎ、村上(ヤクルト)が中越えのサヨナラ打。4強のカベを打ち破った。
四回に佐々木(ロッテ)が先制3ランを浴び、打線は六回まで無得点。ベンチのムードは重苦しかった。13年、17年大会はリードを許す試合展開の中で投手は守りに入り、打者は打てない焦りにさいなまれた。アウェーの空気にのまれてミスも出て、敗れ去った。
今大会の準決勝も打線は再三の好機をつくりながら、あと一本が出なかった。投手も先発の佐々木、2番手の山本(オリックス)が4イニング目に集中打を浴びて失点するなど、継投のタイミングに遅れが生じた。
不振に悩んでいた村上の起用を巡っても、ベンチは二転三転。九回裏無死一、二塁の場面でバントを想定した栗山監督は牧原(ソフトバンク)を代打で送るつもりで準備を命じていた。結局、村上をそのまま打席に送りサヨナラ打を放ったものの、あくまで結果オーライ。栗山監督は事あるごとに「選手を信じる」と話していたが、代打を用意した時点で村上への信頼が揺らいだのだろう。