女子やり投げ北口榛花の世界陸上金メダルに思う…選手が国旗をかざす意味の変化
ようやく涼しくなった。夏は大変だった。深夜の世界陸上選手権から早朝の全米オープンテニスと、不規則なテレビ観戦が続き、(どうせ暑くて眠れないが)生活は乱れた。最大の収穫はやり投げの北口榛花だ。
やり投げはヨーロッパの人気種目だ。北欧の白夜の競技会は夕方からやりの放物線が見える席が埋まっていく。かつて異才・溝口和洋は己の弾道に酔い、気に入らないと踏み切り線を踏んで記録を消した。現役終盤は踏んでばかり。野球から転向したきっかけは「味方のエラーが許せんかった」と話したが、自分自身をも許せない豪傑だった。
世界記録保持者のヤン・ゼレズニー(チェコ)がアトランタ五輪で優勝した後、契約M社が野球の遠投を企画して130メートルくらい投げた。地元ブレーブスの入団テストと銘打ったが、ヨーロッパならやりで食える。あの辺は金の卵がゴロゴロ、ツインズのスカウトが話していた。
北口は豪快な最後の一投で金メダルを手にした。チェコに渡って師事したコーチと抱き合い、日の丸を羽織って歓声に応える姿は印象的で、チェコ語の会見に驚いた。卓球の福原愛や石川佳純の中国語ほどではないが、競技への情熱が伝わってきた。強くなるには本場に出向いて研鑽するしかない。テニスの錦織圭、マラソンの大迫傑……1980年代から90年代は世界の強豪が円を求めて来日したが、時代は変わり、選手は自ら海を渡る覚悟が求められている。ということは、国代表=日の丸の意味も変わっているはずだ。