「自分より小さかったはずの富士錦関が…」入門前の富士桜もだまされた新弟子勧誘あの手この手
日本相撲協会は、新弟子検査で「身長167センチ、体重67キロ以上」の基準に満たなくても、運動能力検査をパスすれば合格させることにした。事実上の体格基準撤廃であり、志願者不足に悩む協会の現状を表している。小よく大を制するのが相撲の醍醐味で、小柄でも素質のありそうな若者は常にいる。基準を満たそうとたんこぶをつくったり、水をたらふく飲んだりして受検したといった話は山ほどある。
昭和の名力士、元関脇富士桜は中学生の時、同じ甲府市出身の小結富士錦(のちの高砂親方)の勧誘を受けたが、農家の長男で、体格も1963年当時の基準(メートル法換算で約171センチ、71キロ)に届くか怪しかった。
「自分は体が小さいから」と不安を口にすると、富士錦が並んでみせ「俺より大きいんだから大丈夫」と言われ、迷った末に入門を決意する。
「ところが部屋へ来てみると、自分より小さいはずの富士錦関の方が大きくなってるんだよ」
聞けばスカウトに来た時の富士錦は、はかまの中で膝を曲げていたという。「やられたと思ったけど、しょうがねえ」と腹をくくり、突き押し一筋の土俵人生が始まった。