制球とスピード、相容れない2つを両立させて球界の常識を覆した思考回路
投手にとって、球速と制球は相いれない関係にあるといわれる。力いっぱい速い球を投げようと思えば力むし、フォームは乱れる。フォームに狂いが生じれば、制球も乱れるのが道理だ。けれども、大谷はそうは考えない。かつて球速とコントロールのどちらを優先するかという本紙の質問に、本人はこう答えている。
「僕は表裏一体だと思うんです。正しいフィジカルで、正しい投げ方をすれば、球速も上がるし、コントロールも良くなるし、スタミナ面でもプラスだと」
その言葉通り、球速と制球を両立させたわけだから、ある意味、球界の常識を覆したことになる。
新たな球種のツーシームを手の内に入れた22年8月以降は、まさに敵なしといったあんばい。8月の防御率は2.20、9月は1.18。ストレート、フォーク、カーブ、スライダーと4種類だった球種に、シュートしながら落ちるツーシームが加わって投球の引き出しは増えた。ツーシームは最速162キロ、縦に横に大きく変化する。
46本塁打でタイトルを争った21年はア・リーグMVP。投げて15勝(9敗)、打って34本塁打の22年はメジャーで初めて投打とも規定に到達。投打ともメジャーでトップクラスの成績を残す唯一無二の存在になった。(つづく)
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昨季の大谷は打者として「高め速球を克服」、投手では「魔球を習得」し、MLB界を席巻した。
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