球界の寝業師こと根本陸夫さんに教わったスカウト術 「スピードガンよりも自分の目を信じろ」「タクシーには乗るな」
スカウトの仕事と酒は切っても切れない関係にある。酒を口にしない鈴木は先輩スカウトの「酒を飲めないと勝負にならない」という言葉に「だったら、お茶で勝負してやる」とタンカを切った。
下戸なスカウトの立ち回り方については、当時西武の監督であり、自分をスカウトに任命した根本陸夫氏の教えが役に立った。鈴木は言う。
「『テル、ウイスキーをなみなみと入れたグラスを相手に見えるように置いておけ。ビールや日本酒はちょっとでもグラスが空いたらどんどんつがれるからな。でも、ウイスキーはつぐ酒じゃないから飲め、飲めとはならねえよ』と。それを聞いて、酒席でどうしても断れないときは、ウイスキーをもらうことにしたんです」
昭和、平成期に広島、西武、ダイエーで監督、編成トップを歴任した根本氏は、1978年に西武監督に就任、西武黄金期の礎をつくった。
「オヤジ」と慕われた根本氏は、81年ドラフトで社会人入りが決まっていた工藤公康を6位指名、父親を口説き落として入団にこぎつけるなど、「球界の寝業師」と呼ばれた。