海洋冒険大作を上梓 笹本稜平氏に聞く
「海に眠る財宝を登場させると、どうしても一獲千金を狙うトレジャーハンターの冒険ロマンになりがちですが、そうはしたくなかった。しかし、宝をそっと保存しておくだけ、というのもきれいごとかもしれない。そこで、学問や“血”のために沈没船を追う主人公と、あくまでも金を狙うトレジャーハンターとの対立軸を設けて物語を進めていきました」
実は、山よりも海を舞台に描く物語の方が難しいと著者は言う。
「山の場合、その山の高度やお国柄などさまざまな要素によって表情が変わります。しかし、海は圧倒的スケールを持つものの、ひとたび船でこぎ出せば、代わり映えのない一面の“水”。荒れてもらわないと小説にならないが、荒れっぱなしでもお話が進まない。そこで、400年前のご先祖という時間のベクトルを加えることで、躍動感を持たせることができました」
<改めて海の懐の深さを感じる>
登場人物も実に魅力的だ。
真佐人の師匠である水中考古学教授、アレグリア号を歴史遺産にするというビジネスを持ちかけるスペイン人実業家、そして投資ファンドと組むトレジャーハンター。海に命を懸ける熱き男たちの物語に、魂を揺さぶられる。