読書エッセー「ホンのひととき」を上梓した女優で作家・中江有里さんに聞く
読書が苦痛になって、先へ進めなくなった経験のある人、結構いるんじゃないか。そんな人に中江氏は「併読」を勧める。
「一冊をずっと読んでいると、その文体に慣れすぎて飽きてくるときがありますよね。私はジャンルを変えて、3、4冊を併読しています。そうすると新鮮な気持ちで読める。眠る前は、ゆったりしたテンションのもの。長い移動のときは厚めの本にする。結果的に読み進めるのが速くなります。読書力って、筋肉と一緒で常に鍛えていないと衰えていく。読み続けていると、どんどん読めるようになります」
最近、印象に残った本を一冊挙げてもらった。音楽系出版社の「モーツァルト家のキャリア教育」(アルテスパブリッシング)だそうだ。
「キャリア教育って最近の言葉じゃないですか。それが18世紀の天才音楽家とどうしてつながるのか。そこに興味を引かれました。モーツァルトのお父さんの話なんです。自分の仕事そっちのけで、息子の才能を伸ばすことに注力するんですが、息子に反発される。うまくいかないところに人間味があって。そういうヒューマンな読み方もできるし、天才の子どもを親はどう導いたらいいのかという教育論としても読める本でした」