「世界で一番美しいイカとタコの図鑑」窪寺恒己監修、峯水亮解説、澤井聖一企画・構成
イカとタコと聞いて、「おいしそう」とは感じても「奇麗」とはなかなか思えない。でも、本書を手にしたら、自分がいかにイカやタコについて知らなかったかを思い知らされるに違いない。イカやタコをはじめとする頭足類の奇妙ながらも美しい姿、生きものとしての魅力を伝える大判写真図鑑だ。
トップを飾るのは、一昨年に世界で初めて深海で生きている姿の撮影に成功したダイオウイカ。大きなものでは触腕(獲物を捕らえるための腕)を含めると全長10メートル以上にもなる超巨大イカは、大航海時代に恐れられた伝説の「海の魔物クラーケン」のモデルともいわれている。マッコウクジラが海中でダイオウイカを捕らえた迫力満点の写真も収録されている。
上には上がいるもので、深海1000~2000メートルに生息する「ダイオウホウズキイカ」は、長さこそダイオウイカには及ばないが胴部が太くて体重が500キロにもなり、世界最大という。かと思えば、日本近海には、成体でも外套長(胴体の長さ)が2センチにも満たない世界最小の「ヒメイカ」が生息している。
その他、透き通った体をさまざまな色のドット模様で飾りたてた「ゴマフホウズキイカ」など、アートのように美しいイカの幼体たち、シマウマのような模様を持つ「ヨーロッパコウイカ」、密林のクモを思い起こさせるカラフルな細身の体が、獲物を捕るときには腕の間の傘膜が広がりサーカスのテントのようになる「ワンダーパス・オクトパス」、そして深海の熱水噴出孔近くで生きる「ボルケーノ・オクトパス」など。どれも驚きに満ち、ページをめくりながらワクワクしてくる。