「ライツ・オン! 明治灯台プロジェクト」土橋章宏著
物語の舞台は、明治初期の長崎県伊王島。西欧は日本に航海の安全のため灯台設置を強く求めていたが、当時の日本には十分な明るさの灯台を造る技術がなかった。そこで招聘されたのが英国人技師のリチャード・ブラントン。彼は、日英ハーフで通訳の丈太郎と共に灯台設置予定地を検分して回っていたが、船の故障で長期滞在する羽目になった伊王島で、佐賀藩の天才発明家・田中久重と出会う。理不尽な階級差別から本国を飛び出したリチャードと、ハーフを理由に居場所が見つけられなかった丈太郎は、この出会いを契機に、リチャードはプロの技術者として、丈太郎はプロの通訳としての情熱を燃やす。次々と立ちはだかる障害に負けず、灯台は建設できるのか――。
国も世代も異なる人々が力を合わせて困難なプロジェクトに挑む姿を描いたエンターテインメント小説。シナリオ大賞の受賞経験のある著者らしく、魅力あふれる登場人物の爽快な物語をテンポよく読ませる。
(筑摩書房 1400円)