「防犯カメラによる冤罪」小川進著
DNA鑑定と並び、犯罪の決定的な証拠として採用されている防犯カメラの画像。犯罪の早期解決に役立つ一方で、実は誤認逮捕の増加も招いているという。
小川進著「防犯カメラによる冤罪」では、防犯カメラの限界や鑑定の仕組みを解説しながら、ある人物のずさんな鑑定の実態を暴いている。その人物とは東京歯科大学教授の橋本正次氏。長崎大学大学院教授である著者自身も、裁判の鑑定書作成を請け負うことがあるが、1本書くのに1カ月から1年は費やす。しかし橋本氏の場合、2日で3本もの鑑定書を書き上げてしまうという。
2008年に発生した「舞鶴女子高生殺害事件」。犯人を特定する証拠は防犯カメラの画像しかなく、そこに写っていた“自転車を押す男”の鑑定が行われた。京都府警側の鑑定人が橋本氏であり、防犯カメラの画像と、容疑者として浮かんでいた中勝美の耳の特徴が一致しているとの結論を出した。
しかし、弁護側鑑定人である奈良先端科学技術大学院大学の千原國宏教授の結論は、“鑑定不能”。画像の解像度は非常に粗く、耳の画像はたったの4画素。特徴を比較することなど不可能だとした。