「悲嘆の門」(上・下) 宮部みゆき著
物語の主人公はネット監視会社でサイバー・パトロールのアルバイトをする大学1年生・三島孝太郎。サイバー・パトロールとは、ネット上に存在する犯罪に結びつきそうな書き込みを発見する仕事なのだが、大学生活に熱が入らなかった孝太郎はこのアルバイトにやりがいを感じ始めていた。
そんなある日、死体の一部を切り取る殺人事件が次々と発生。さらに西武新宿線の沿線付近のホームレスがいつのまにか姿を消していることも話題となり、ホームレス狩りをする中高生のサイトをチェックしていた孝太郎の先輩・森永が、連続失踪事件ではないかと言い始めて調査を開始する。ところが、その森永までが失踪してしまった。行方を捜し始めた孝太郎は、バブル期にもてはやされて、その後廃虚となったビルに行きつき、そこで恐ろしい怪物に遭遇する……。
本書は、ベストセラー「英雄の書」と同じ設定で描かれたミステリー長編小説。「英雄の書」とは別に単独で読んでも楽しめる。ファンタジーの要素が多く盛り込まれており、ネット時代の言葉について考えさせられる内容となっている。