「英国の幽霊伝説」シャーン・エヴァンズ著、村上リコ監修、田口未和訳
英国のナショナル・トラストが管理する膨大な保護資産にまつわる幽霊物語を集めたフォト・ストーリー集。
ある調査によると、英国人の4割以上が幽霊や亡霊、その他の超自然的な存在を信じ、スコットランドと北イングランドでは、3分の2近くの人が幽霊を見たり、気配を感じたことがあると答えているという。本書は、歴史的建造物などにまつわる伝説をはじめ、現在の管理人やその家族、ボランティアや訪問者など、さまざまな人が体験した奇妙な体験を紹介する。
英国で最も有名な亡霊が出没するのはノーフォークの「ブリックリング・ホール」。ここは、かつて国王ヘンリー8世の2番目の妻アン・ブーリンが暮らしていた屋敷の跡地で、1536年に待望の男子を流産したためヘンリーの怒りを買い処刑されたアンの幽霊「灰色の貴婦人(グレー・レディー)」がさまよっているとされる。
毎年、処刑された5月19日には、首のない御者が引く馬車に乗った彼女の幽霊が、自分の首を膝にかかえて屋敷への丘を上っていくといった、今も続く目撃譚を紹介する。
12世紀に築かれた「チャーク城」の元子ども部屋で暮らす管理人一家の前に現れる霊たちは、寝ている住人の足を引っ張ったり、髪をなでたりと、害を与えるのではなく愛情を示す。一方で、鍵をかけたはずの部屋で自動警報装置が鳴り、駆け付けると、フォルダーに隠してあったはずのブザーが椅子の上に放り出されていることがたびたび起きるという。