「山月庵茶会記」葉室麟著
かつて黒島藩の勘定奉行を務めた柏木靱負が豊後に帰ってきた。柏木は16年前、家老の座を土屋左大夫と争って敗れ、藩政から身を引いた。それだけではなく、妻の藤尾が不義密通の疑いをかけられて自害するという悲運にも見舞われた。京から帰国した柏木は養子のいる屋敷には入らず、荒れていた別邸を修繕して山月庵と名づけ、茶人としての生活を始める。柏木は山月庵で茶事を催すが、招いたのは、柏木を裏切って土屋についた者や、藤尾の密通の噂を知っていると思われる者だった。やがて、藤尾の死には藩の機密が関わっていたことが見えてくる。
好評の黒島藩シリーズ第3弾。(講談社 1550円+税)