ベンツと最新印刷技術との「出合い」
本書もその好例。通常の4色印刷機に「コーター」と呼ばれるユニットを追加、冒頭の「蒔絵」に近い原理で箔を「印刷」する。糊を刷り、箔を圧着し取り去れば、糊の絵柄なりの「金属面」が得られる理屈だ。従来の「箔押し」が熱した型を押し付ける「ホット・スタンプ」と呼ばれるのに対し、インラインフォイラーによる「コールドフォイル」と称される。特長は、広い面積に微細な絵柄の表現が可能なこと。さらに「箔」の上から「4色オフセット」印刷が可能。しかもこれらの工程が1台の印刷機で済んでしまうため、版ズレが少ない。ただし「光沢感」がやや控えめ。従来の箔と置き換わるというよりも適材適所、共存していくことになるのだろう。
画期的技術を繊細かつ大胆に取り入れたデザイン。ベンツというテーマと最新技術の「出合い」に乾杯、である。(サンマーク出版 1500円+税)
▽みやぎ・あずさ 工作舎アートディレクター。1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。