グレーの本文に“毒”が冴える
この紙のクセの強さはサキやレジナルドの個性を受け止めるにふさわしい。……が、シリーズものに使うには「クセ」に加え「価格」も問題。それを乗り越えGOサインを出した版元の勇気をたたえたい。
そしてカバーにも配された、19枚の挿絵が異彩を放つ。銅版画特有の極細線の集積。およそ人間とは見えず、怪物めいた異形のキャラクターが強烈。描き下ろしなのかは不明だが、レジナルドのカリカチュアとみてよいだろう。
さて、穴蔵のごとき自室で本書を開き気づく。「グレー」の本文が可能なのは、十分な光量があればこそ。我が身の衰え(老眼)を呪い、お天道様に感謝しつつ筆をおくことにする。(風濤社 2400円+税)
▽みやぎ・あずさ 工作舎アートディレクター。1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。