一度見たら忘れなれない“面構え”
ところで、箔押し(ホットスタンプ)に欠かせない3要素は、「熱・圧・版」。原理はシンプル、あらかじめフィルムにコーティングされた色素(顔料が入ると艶消しに)や金属を熱した版で紙などに押し付け定着。版の素材は真鍮、銅、亜鉛、マグネシウムなど。用途により使い分けられる。
本書のような金属調の箔には、素材にアルミニウムを用いることが多い。とはいえ台所のアルミ箔とは製法が異なる。真空機の中で溶かしたアルミをフィルムに「蒸着」、その厚みわずか0.05ミクロン。家庭用アルミ箔が11ミクロンというから、薄さのほどがうかがい知れよう。
ときに本書のカバー用紙は、ヴァンヌーボVナチュラル。上品な風合いが身上。だが、これだけ広い面積に箔押しするには、微細な毛羽立ちが気がかりだ。箔押しの前にグロスニスを引いているのは、紙の表面をならし、箔の「喰い付き」を良くするためか? 他にも箔押しの現場ならではのノウハウが数多くあると聞く。美しい仕上がりはもちろん、事故を 減らすため、案件ごとに「オーダーメード対応」がなされているとのこと。さすが歴史に裏打ちされた技術、頼もしい限りである。