「童謡はどこへ消えた」服部公一氏
「童謡が再び脚光を浴びたのは、GHQの文化的指導のもとで昭和24年にNHKラジオ『うたのおばさん』の放送が始まったときでした。同時に、『かりそめの恋』などもはやりましたが、子供の前で大人の色恋を露骨に歌った歌を流すわけにいきませんからね(笑い)。子供向けの歌が必要だということで、レコード会社は童謡のレコードも量産し、どこの家庭でも童謡が聞かれるようになったわけです」
しかし、テレビの登場により状況は一変する。
「民放で、リズミカルで親しみやすいCMソングが頻繁に流れるようになると、子供はそちらばかり口ずさむようになった。そのトレンディーさに対抗しようと、ラテン系リズムの『おもちゃのチャチャチャ』や僕も『アイスクリームのうた』などを作りましたが、テレビの普及に反比例してレコードが下火になると、童謡も巷から姿を消していきました」
著者は童謡復興を主張したいわけではない。
「日本の文化史的に言うと、童謡を作る時代は終わっています。童謡の作曲家としては、せめて過去の童謡が完全に忘却されないように、歌い継いでほしいですね」