昭和15年、召集令状を受け取った立太郎は、思いをよせていた女性のいる喫茶店に足を向けた。彼の丸刈りを見て事情を察した女性は、何も言わず彼の好きな「ボレロ」のレコードをかけてくれた。中国戦線に送られた立太郎は、捕虜を銃剣で突き刺すことを命じられる。抵抗できない人間を殺すことに逡巡するが、逆らえば敵前抗命罪で自分が殺される。覚悟を決めて捕虜を見た瞬間、相手はにやりと笑った。その体験は悪夢となって繰り返し立太郎をさいなむ。戦後、帰国した彼は、喫茶店の一家が空襲で全滅したことを知る。(「ボレロ」)
中学生が「身近な人たちの戦争体験聞き書き学習」でつづった22編の作文集。(高文研 1400円+税)