著者のコラム一覧
宮城安総工作舎アートディレクター

1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。

歴史的な詩集を完全復刻

公開日: 更新日:

「小さなユリと」黒田三郎著

 帯に「父と娘のささやかな日々。1960年に昭森社より刊行された、歴史的な詩集を完全復刻」とある。

 戦中派の詩人・黒田三郎。自身が結核で入退院を繰り返すうち、妻も罹患し入院。突如、父子家庭となる。年端のゆかぬ幼稚園児の娘・ユリとの、ありふれているけれど、取り換えのきかない日常が切り取られている……。ただし、一筋縄でいかないのは、黒田が無類の酒好きで酒癖も悪く、一杯やりながら娘を寝かしつけたあと、さらにアルコールを求めて飲み屋にむかう「ダメオヤジ」であること。痛いほど分かっている「ダメっぷり」と、可愛くてたまらない娘への思いが、訥々と語られる。詩人は腐るでも苛立つでもなく、淡々と事実をつづる。読者もつい、ほだされ共感。なぜだろう、俳優・豊川悦司を思い浮かべる。

 さて、ほぼ半世紀ぶりの復刻である。どこまで初版に「寄せるか」。目標が明確な分、細部への心配りにも力が入る。正寸より天地が12ミリ短い、四六判変型、ハードカバー、角背。「完全復刻」を謳うだけあって、初版当時はなかったバーコードは帯に。幼児期の娘が描いた、ほほえましくも味のある父の顔が、カバーと表紙に配置される。共にOKミューズコットン(=用紙)に4色印刷。一見、同じデザイン。だが、紙の色が異なる。カバーは「やまぶき」、表紙は「しろ」。同一データの使い回しは不可能だ。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    田中圭“まさかの二股"永野芽郁の裏切りにショック?…「第2の東出昌大」で払う不倫のツケ

  2. 2

    永野芽郁“二股肉食不倫”の代償は20億円…田中圭を転がすオヤジキラーぶりにスポンサーの反応は?

  3. 3

    永野芽郁「二股不倫」報道で…《江頭で泣いてたとか怖すぎ》の声噴出 以前紹介された趣味はハーレーなどワイルド系

  4. 4

    大阪万博「遠足」堺市の小・中学校8割が辞退の衝撃…無料招待でも安全への懸念広がる

  5. 5

    「クスリのアオキ」は売上高の5割がフード…新規出店に加え地場スーパーのM&Aで規模拡大

  1. 6

    のんが“改名騒動”以来11年ぶり民放ドラマ出演の背景…因縁の前事務所俳優とは共演NG懸念も

  2. 7

    「ダウンタウンDX」終了で消えゆく松本軍団…FUJIWARA藤本敏史は炎上中で"ガヤ芸人"の今後は

  3. 8

    189cmの阿部寛「キャスター」が好発進 日本も男女高身長俳優がドラマを席巻する時代に

  4. 9

    PL学園の選手はなぜ胸に手を当て、なんとつぶやいていたのか…強力打線と強靭メンタルの秘密

  5. 10

    悪質犯罪で逮捕!大商大・冨山監督の素性と大学球界の闇…中古車販売、犬のブリーダー、一口馬主